【胃薬の長期投与にご用心?】制酸剤の長期使用による副作用について

はじめに

「胸やけがつらい」「逆流性食道炎と診断された」・・・そんなときに処方されるのが、PPI(プロトンポンプ阻害薬)などの制酸剤です。

とてもよく効く薬なので、長期間飲み続けている方もおられるでしょう。でも、長く使い続けることで体に悪い影響が出ることもあります。「注意が必要な面」を、お話しします。


胃酸を抑えることで起こる副作用

胃酸は、食べ物を消化したり、ばい菌を殺したりする働きがあります。長く胃酸を抑えすぎると、次のようなことが起こりやすくなります。

① 感染症にかかりやすくなる

胃酸が減ると、食べ物や飲み物から入ってくるばい菌をうまく殺せなくなります。そのため、お腹の感染症(下痢や腹痛など)や、肺炎(特に高齢の方)が起こりやすくなるという報告もあります。

② 栄養の吸収が悪くなる

胃酸は、体に必要な栄養を吸収する手助けもしています。制酸剤を長く飲むことで、

  • ビタミンB12(貧血やしびれの原因になることも)
  • 鉄分(貧血の原因に)
  • カルシウム・マグネシウム(骨が弱くなったり、だるさ・けいれんなどの原因に)

が吸収されにくくなる可能性があります。

③ 胃にポリープができることがある

長く制酸剤を飲んでいると、胃に小さなポリープ(できもの)ができることがあります。多くは良性(がんではない)ですが、定期的な胃カメラでのチェックが大切です。


胃酸とは関係がはっきりしない副作用(でも注意は必要)

制酸剤を飲み続けている人で、次のような病気が起こる可能性があるという報告もあります。ただし、はっきりと「制酸剤が原因」とは言い切れない部分もあります。

① 認知症との関係?

一部の研究では、「長く制酸剤を飲んでいる人は認知症になりやすいかもしれない」との報告もありますが、他の研究では関係がないという結果もあり、まだ結論は出ていません。

② 腎臓の病気との関係?

制酸剤を長く飲んでいると、腎臓の機能が悪くなることがあるという報告もあります。

③ 胃がんや食道がんとの関係?

制酸剤を長く使っている人で、胃がんや大腸がんのリスクが高まるかもしれないという報告もありますが、ピロリ菌感染など他の要因も関係しており、まだはっきりとはわかっていません。


どうすればいいの?

制酸剤はとてもよく効く薬で、多くの人がこの薬で助けられています。必要な期間使うのはとても大切です。ただし、「症状がよくなったのにずっと飲み続けている」という方は、以下の点に気をつけてください。

  • 症状が落ち着いたら、薬を減らす・やめることを医師と相談しましょう。
  • 定期的に血液検査や胃カメラを受けると安心です。
  • 食事や生活習慣の見直しも大切です。

最後に

制酸剤はとても良い薬ですが、「飲みっぱなし」には注意が必要です。
薬は、「必要なときに、必要な期間だけ」が基本です。
気になることがあれば、いつでもご相談ください。